顧客満足度

顧客満足度と言っても様々な捉え方がある。
私は数店舗を経営しているが、私なりの顧客満足度というものを考えてみる。

店舗ビジネスにおいての、顧客満足度を図るバロメーターは、エゴサーチでの☆印の数ではない。 ☆がいくつとか、店舗評価が30点とか70点とか関係ない。 お客様が「店舗にリピートするか否か?」これだけである。 リピートすれば満足度があり、再来店しなければ満足度が低いという事。端的に言えば、「100点、または0点」しかない。

店主が間違えるのは、顧客のニーズを捉えるのではなく、自分の価値観が顧客のニーズと思い込むこと。

例えば、うどん屋さんを例にとってみよう。
いつも混んでいて、繁盛しているうどん屋さん。 輸入小麦・食材で作る、お昼の天ぷらうどんセット1000円が一番人気。 でも、店主の讃岐の本場仕込みの腕で、国産小麦を使い、国産地産地消の食材を使った、2500円の天ぷらうどん定食が店主のお勧め。 店主は、原価率も高く、手間も掛かり、贅沢な2500円の定食を食べてもらいたいから、先日2000円に値下げした。 その代わり、1000円のお昼の天ぷらうどんセットを廃止した。 半年後、お客は激減し結局廃業に追いこまれた。
値下げした天ぷらうどん定食に「2000円が非常にお得」だという価値を見出すお客も少なからず確かにいる。 しかしそのお客はお店を支えるのに十分な数ではない。 大衆は1000円の天ぷらうどんセットに価値を見出していた。 原価率も高く、大変お得になった天ぷらうどん定食だが、実際の顧客満足度は低い。 何処にでもあるような輸入食材だけで作った天ぷらうどんセットの方が顧客満足度は高かった。
店主の失敗は、自分の価値観が先行して大事なことに気が付かなかった。 顧客満足度が高かった大衆顧客向けの商品を捨て、自分のこだわりを共有できる新しい顧客を開拓し求めた為だ。

大衆迎合すれば良いというわけではないが、こだわりを求める少数派(マイノリティー)の顧客を開拓するより、 大衆迎合(マジョリティー)商売の方が、成功率は高い。 事実、ハンバーガーでも、工場生産のマクドナルドは大衆に指示され、何万店舗もある。 一方で、手作り、こだわり食材のハンバーガーショップは数店舗の展開しかできない。

当社のゴルフ練習場にもレンタルクラブがある。2種類あるとする。
A,練習する時に、無名ブランドだが、機能や特性が分かりやすいクラブがある。
B,癖が強いが、有名ブランドのレンタルクラブがある。

ゴルフ習熟者は、前記のクラブを借りるかもしれない。しかしそれは当店にとって少数派(マイノリティー)である。 当店に来てお金を落としてくれる多くのゴルファー(マジョリティー)は初心者や中級者が多い。 大半が有名ブランドのクラブを借りるだろう。 その方が大衆顧客にとって、ブランド嗜好の方が満足度が高いからである。

それではマイノリティーを全て無視すべきかと言えばそうとも一概には言えない。

我々はゴルフ場へ連れて行く旅行商品も提供している。一部の顧客から新しいゴルフ場のリクエストを求められる。 そこで、一風変わった高額のツアーを作ってもうまくいかない事が多い。
当社の旅行顧客のマジョリティーと合わないと、集客に苦慮するのである。 マイノリティー顧客をターゲットにすると集客に苦労し、広告予算も多くかかり、収益に乗らない。
今自分たちが持つマジョリティー顧客の嗜好性や価値観とずれていると、ビジネスは上手くいかないという事である。
ある程度のビジネスモデルが完成している状況で、 マイノリティーの顧客を新しいターゲットにするには、収益を考えるよりも未来志向で投資の意味合いでやる必要がある。

・・ビジネスの収益のカギは、マジョリティーの顧客に対して、顧客満足度を如何に上げるか?・・

来店してくる多様な顧客に対して、店舗の顧客満足度を何処の顧客に一番向けるのか?
一ついえる事は、 大衆迎合(マジョリティー)した方が、顧客が圧倒的に多く、ビジネスも巨大になり、成功率も高い。 店舗ビジネスで置き換えれば、一番売れている商品の顧客特性に向けてビジネスを展開するという事。

ビジネスを拡大する事に置いて、今の顧客層とは別に、新しく違うタイプの顧客層を入れる事は決して間違いではない。 しかし、価値観が違う顧客が同居することで、店舗の方向性がブレてくる。 そしてそれは顧客にも伝わり居心地が悪くなる。商品や店舗は何も変わっていないのに、 最終的には今まで来店していたお客様の顧客満足度を下げる可能性にもつながってしまう。

事業拡大は今のマジョリティーをKEEPして、如何に来店を増加させるか? 策を講じてマジョリティーを増やすのか?新しい商品でマイノリティーを受け入れるのか?

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では、全てのお客がマジョリティーで商品や価値観を統一すべきなのか?
それも違う。

私はエステサロンを経営している。 イトーヨーカドーの店内で大衆向けのサロンだ。 リーズナブルで、入店しやすく、健全で、安心なサロン。
勿論、これでも良いのだが「顧客満足度」という観点からすると、もう一つひねりが必要だ。 それは、技術やサービスだけではない。それはサロンビジネスとして当たり前に必要な事。 「顧客満足度」の一つに、「来店するのに納得できる動機づけ」とでも表現したら良いのであろうか??

例えば・・・リーズナブルなサロンが2つあるとする。
金額も、内容も、満足度も、接客も、店舗の雰囲気もほぼ同じ。
A「自分と同じような顧客層が多い」
B「自分と同じような顧客層が多いが、モデルさんや芸能人もいる」

「モデルさんや芸能人」は店舗にとってマイノリティーだが、恐らくお店の価値観は壊れないし、お客の居心地も悪くならない。 むしろマジョリティーにとって通っているサロンの信頼性や納得感が向上し、顧客満足度はが高くなるだろうと思われる。

これと同じロジックを、私が運営するゴルフ工房でも採用している。
ゴルフ工房は、ゴルフクラブを修理・改造する店舗である。 勿論、アマチュアゴルファー中心のお店ではある。
しかしそのお店にトーナメントプロが来店している事が分かれば、お店のアイデンティティは高くなる。 顧客にとっても、「ゴルフで生活しているプロゴルファーも来店しているお店」と分かれば、それだけで信頼性が高くなる。 そして、そのお店で作業してもらえば、他の同業店よりも顧客満足度は高くなるはずである。
http://golfkobo.net/

上記の2例は、マジョリティーの顧客満足度を上げる為に、マイノリティーを利用している。

顧客満足度は利用する側(顧客)の心理で決まる。 それは商品のサービスや値段だけで決まるものではない。 顧客にとって、居心地の良い環境を作り、来店する理由を感じさせる。
如何に満足させるかは、運営側にとって顧客を知る努力でもある。 しかし、顧客に聞いて、言われた事を実行する事は、実は満足度にはつながらない。 一顧客から言われた事を実行しても、マイノリティーの意見であり、 マジョリティーの行動様式や価値観の共有に反映されない事が多い。

最後に。。。
新商品で成功するには共通な事がある。
リサーチしてからやるのは意味がない。マジョリティーからヒアリングしても前衛的で今後に有益なアイデアが出る訳がない・・
それに、何でもある世の中で、大衆が求めているものが、今の世の中に存在しないという確率は少ない。
我々は、発想力とアイデアで、誰よりも先に行動を起こし、 顧客に「驚き」と「感動」を与え、 マジョリティーの多くに共感と反映ができれば、顧客満足度が上がり、ビジネスも繁栄するだろう。
それが起業家(企業)の使命だという事も忘れてはならない。

※ ここで書いている大衆(マジョリティー)とは、世の中全体の大衆ではなく、 自社の店舗に来店している顧客の嗜好マジョリティーである事をここに再確認しておく。

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2021年09月13日付

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