有事の経営者

緊急事態宣言を受けて日本国は有事の状態に入った。

第二次世界大戦以降、誰もが経験した事が無い事態になった。
誰もが問題は山積み。これからは国に頼るのか?自分で解決するのか?

少なくても経営者は、全てを自分で解決するしかない。国や自治体は会社を助けてはくれない。 会社を存続させたければ、経営者が自ら様々な情報を掴み、対応を考え、未来を想像し、出来る事は全て行い、動きまくる必要がある。 今の時期に経営者が止まる事は許されない。出来る事も出来ない事も関係ない。1%でも可能性がある限り動く。

経営者が行う事・・その1
従業員や顧客の安全を考える

日々の経営者の仕事は会社の運営や従業員の生活を考える事である。基本はそれでいい。 しかし今回の有事は、人間の健康が脅かされ続けているという事態。 緊急事態宣言も「経済を犠牲にして人類の生命を尊重する」という考えである。

絶対に感染を防がなくてはならない。営業するのならば、万全の対策をしなくてはいけない。 絶対に顧客に迷惑をかけるわけにはいかない。 怯えている従業員には労働を強制させる訳にもいかない。 もし感染者が出たら営業停止せざる負えない。 それは不可抗力だとしても、企業やお店にとって信用の失墜に繋がる。

休業するのは簡単だ。しかし経営とはそんな簡単な話ではない。 安全の為にいつ休業すべきか?どこまで営業継続すべきか?相反する葛藤が常にある。 いつ迄考えても頭の中でループしている。正しいと思える答えが見つからない。


経営者が行う事・・その2
会社の存続を考える

年商1億2000万の企業なら月間の売上は1000万円。最終利益は5~10%とするなら、それに伴う毎月の支払いは900万円以上。
お店を閉めれば当月の売上げは「0円」。しかし当月の支払いは「先月分の家賃・仕入れ・人件費」など900万以上発生する。 900万以上の余剰キャッシュが無ければ今月は支払い不能に陥る。もし当座で手形決済の企業が2か月不渡りが続けば「倒産」する
年商1億の企業で、内部留保1000万以上持っている会社は数%も無い。一体どうやって補填する?
足りない分は1ヶ月以内に急いで運転資金を調達しないといけない。 キャッシュを繋ぐのは1ヶ月以内。融資を受けるのは2か月以内でないとOUT。 今は銀行も金融機関もパンクしている。中小企業の9割は申請に行くだろう。 審査だけで数十日かかる。融資決定しても実行するにはもっとかかる。 もし出遅れたら融資が下りた頃には会社は倒産している。

有事の現在、国難であり経営するにも様々な規制がある。通常通りに経営はできないし、むしろ世論は経営が悪になっている。 しかし如何なる理由があれど、会社が倒産すれば経営者の責任は逃れられない。 国や自治体は有事の際にセーフティーネットなどのバックアップは行うが、会社の倒産に関して一切責任は持たない。 経営を志した者ならば、このタイミングでこそ絶対に倒産させてはいけない。


経営者が行う事・・その3
従業員の生活を考える

有事の世の中では経済活動を中止する流れである。しかし会社はその流れに対応できても個人はそうではない。 従業員には個々の家族があり生活がある。
労働基準法26条には休業した場合には会社が労働者に休業補償を支払う規定がある。 しかし例外としての、天災や会社の責にあたらない場合はNOWORK NOPAYの原則が当てはまる。 今回の有事はまさに例外措置で、会社が休業すれば従業員は無給になる。 出来る限り、許される限り、労働環境を提供し社員(アルバイト含む)に報酬を支払う環境を作るのも経営者の責務である。 もしそれが可能ではないならば、別の手立てを考える必要もある。

東京のタクシー会社では、600人全員の従業員の解雇を決めた。
緊急事態宣言中ではタクシーに乗る人は皆無。会社も赤字だがタクシードライバーは歩合給が5割以上でほとんど稼げない。 退職ではなく解雇扱いにすれば、失業保険が当月におりる。 従業員は数か月は生きていける。経営者の英断ともいえるかもしれない。 しかしこれは問題の先送りにすぎないのかもしれない。 夏以降はどうなるか誰も分からない。経済が戻っていなければ彼らは恐らく失業者のままだ。その時に食べる事は出来ない


経営者が行う事・・その4
経営の再開を考える

有事もいつかは収束する。
経済が戻り始めるタイミングは間もなくやってくる。その時に無策であれば会社は経済回復するチャンスを失う。 当社も含めて多くの企業が倒産させないために借入を興している。これらは返済義務が生じている。 どこの企業も通常営業では返済できない余分な借金を抱えている。今までの経営スタイルでは返済までできない。 売価を変える。経費を削減する。などの経営収支の見直しが迫られる。

通常営業再開後はどうやって顧客を戻すのか? 借入金を返済するためにどうやって売上を伸ばす? 今を乗りきるのが最優先だが、2か月後の対策も待った無しで行わなくてはならない。


経営者が行う事・・その5
未来を考える

恐らく今回の事態で時代やフローはきっと大きく変わる。 今回の有事は今までの仕事の仕方が大きく変わるきっかけかもしれない。

テレワークを実施した企業が、有事期間中も売上を確保し機能を果たせたと仮定する。 そうなると、都心に大きなオフィスはもう要らない。通勤が必要ないので従業員の交通費も必要ない。 能力のある少数精鋭部隊で構成しビジネススタイルも大きく変貌してしまうかもしれない。

外出しなくては買えない「街の商店街」や「デパート」は消滅し、 AmazonやUBERのような通販が流通市場の8割になってしまうかもしれない。

「リース販売」というビジネスモデルは、(黒字)企業には便利なシステムだった。 企業が車を購入する際に、「リース」で契約すれば決算の時に面倒な登録を税務署にしなくて済む。 毎月同じ金額を支払う事で新車にも乗りかえられる。 リースの一番のメリットは、審査が簡単で会社にお金が無くても契約しやすい。
しかしリースの問題は、金額の対価があくまでも「使用権」であり「所有権」が無いこと。 有事で企業にとって経済活動が停止しても、リース契約は「使用権」なので毎月支払う義務は解消できない。

タクシー会社が車輛を100台保有しているとする。しかし今は有事で運行が出来ない。 毎月1台5万円でリース契約していれば、500万の支払いが使用権として毎月必要になる。使わなくても、如何なる理由があっても契約期間中は原則解消できない。
もしリース契約でなく、ローンで購入した車輛ならば、残額を払えばローン会社からタクシー会社に所有権が移る。 所有権が移れば毎月の支出が無くなる。それだけでなく余剰なタクシー車輛を売却する事もできるので現金を捻出する事も出来る。

これからの経営方針の「リスクヘッジ」に関して検証・見直す機会になってくるのかもしれない。

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現状で安泰な会社はほとんど無いと思うが、正直私の会社も苦しい。
先月・今月と私は報酬は当然取れない。 家族に迷惑を掛けるが仕方がない。 自らの意志で経営の世界で生きているのだから、逃げるわけにもいかない。
トンネルの出口の「光が見えない」と嘆くのではなく、「光が見える」まで歩き続ける

今回の事態を乗り越えるのは、決して「試練」ではなく、有能な経営者であれば克服可能な「業務」と考えるようにしている。

だから私は決して負けるわけにはいかない。



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2020年04月10日付

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