コロナ後の経済

日本でのワクチン接種が始まった。 ワクチン接種先進国のイスラエル等をみると、国民の接種率が50%を超えると感染率が激減しているようだ。 接種率50%超えが経済活動におけるコロナ終息と言えるのかもしれない。
日本では21年8月頃になるのだろうか? コロナが収束すると我々の生活はどうなるのだろう? あくまでも私見ではあるが予想してみよう。

・・・インフレ・・・

現在は緊急事態宣言中でコロナ禍の真っ只中である。何処も経営が厳しい。 倒産しない企業でも、借金ばかりが増えている。 利益を上げていつかは取り返さなくてはいけない。
方法は2つ。
客数を増やすか?値段を上げるか?

客数は増える保証は無い。特に緊急事態宣言等の行動制限がある中では不可能に近い。 ならば値段を上げるしかない。

先日、大手のリーズナブルなファミレスで昼食をとった。 日替わりランチが699円。それ以外はランチでも全て1,000円以上になっていた。 ファミレスのランチで1,000円以上が標準になりつつある。

日本に限らず世界中がコロナ禍になっている。 工場が止まり、物流も麻痺している。 物が作れず、運べない。世界中でモノ不足が生じている。 当然、モノの価値が上がる。金額は高くなる。
現在は全ての方向でインフレに向かう兆候しかない。

・・・雇用・所得・・・

それに対して、最大の問題は、労働者の所得が上がるかどうかという事。 しかしこれは極めて厳しい。
どの企業も多くの借金を多く抱え、5年後の存亡すら誰も保証できない。 従業員の雇用を守るだけで精一杯のところに追い詰められている。

日本を代表するPANASONICの創業者松下幸之助は 「企業は、人を作る。社員は家族と同じ。解雇しない」という言葉を残す。 PANASONICは創業者のポリシーを遵守し、人員整理をタブーとして今まで経営してきた。 そのPANASONICが今回のコロナで大リストラに舵を切る。
旅行会社最大手のJTBは21年3月期で1051億という史上最大の赤字。7,200人の大リストラを行う。 世界有数の超一流大企業でさえこの状況。

終身雇用は崩壊すると言われていたが、今回の件で一挙に加速した。 日本式経営で雇用や収入が守られるということは、近未来幻想になる。 自分の労働・雇用環境は、自分自身のスキルを向上させて、考え、行動し、作り出すしかない。

・・・回復需要・・・

コロナ後に消費は回復するだろうか?
間違いなく回復する。但し条件付き。 短期間で一過性の物だ。

このような状況は、経済用語で「繰越需要」「ペンチアップデマンド」という。
以下抜粋
「ペントアップ需要とは、購入やサービスの利用を控えていた消費者が、 景気回復期に入って一気に需要を満たそうとする行動や、 その行動によりもたらされる結果」

事実、ある程度パンデミックが収まった中国では5月の労働節にコロナ前の2億3000万人以上の旅行需要があったようだ。 これはパンデミック前を上廻ったようだ。
但し、最大の問題点は長くは続かない事。
将来の雇用や所得の不安がぬぐい切れなければ、継続的な大きな消費には結びつかない。 一時的な消費の向上における投資は、企業経営にとって長い将来へのリスクとなる可能性も否めない。 投資をするなら「ペントアップ」のみで回収出来るような思慮を巡らせる必要がある。

去年の9月に始まった観光などの需要喚起策「GOTOトラベル」は我々観光業にとって大きな恩恵があった。 販売した旅行商品のほぼ全てが売切れになった。 宿泊施設はほとんど満室になり、予約が不可能になった。
しかしこれも緊急事態宣言が発令された事に伴い、その後に消費は一挙に伸び悩む。

「ペントアップ」は間違いなく発生する。
従ってパンデミック後の経済復興はまず自然発生的な消費者マインドに委ねる。 「ベントアップ」の終息後に、政府は「GOTOキャンペーン」等の景気刺激策を実施した方が、 経済の長期安定化に貢献すると個人的には思う。

・・・テレワーク・・・

勤務日数が減り、 オフィスのテナント家賃も削減出来て、 交通機関への乗車率も減り、テレワークは良いことずくめの様に思える。
テレワークは定着するか?
正直、私は一時的なブームであり懐疑的だ。

元々テレワークは、企業運営の効率化ではなく、コロナ禍における従業員の出社抑制から派生したもの。 企業側が望んでテレワークにした訳ではなく、ある意味、従業員の安全優先の為の緊急避難策であったわけだ。

自宅勤務のテレワークは、企業側にとって生産効率が上がるとは考えられない。 本来、仕事はチームでするものだ。一つの空間に上司がいて部下がいる。そこで監視や報告があり、均整や統率をとる。 テレワークでどれだけできるだろう?
監視やチームでのノルマが無ければ、必要最低限だけの仕事で一日の大半は遊んでしまうのでは無いか? 企業にとって、雇用者に自由度を与える事は、クリエイティブな発想につながるかもしれないが、 今まで行ってきた集積・管理・均整が取れた組織で動くより、 個々の監視や連絡が取れにくいテレワークは、明らかに効率や生産性は良くない。

一方で、歩合制の仕事なら、モチベーションは保たれるので遠隔業務も問題ない。 大手の企業経営者や管理職も気づき始めているようだ。
コロナが終息した後に、引き続きテレワークを推奨する企業はどのくらいあるのだろう?

企業にとって雇用・労働に関して大事なのは、効率や労働生産性。
実は、人間も組織も企業も、集積した方がはるかに効率がいい。

大企業が田舎ではなく、大都市近辺に集まるのは効率がいいから。 都市部には関係監督省の役所もあり、多くの取引先の会社もある。 自分の会社だけ地方に行けば自社の利便性を失うだけでなく、 取引先の他社から見れば、遠くの会社と取引するより、近くに同業の会社があればそっちへ移ってしまう。 わざわざ遠くの企業と取引する理由がないからだ。

「イヤイヤ、今はインターネットがあるので、地方でも業務は十分に機能する」という人も多い。
私はその人に聞いてみたい。
では何故、大手IT企業(アップル・GOOGLE・FACEBOOK等)はシリコンバレー(カリフォルニア州サンノゼ)に集中しているのか? どこでも仕事ができるIT企業こそ地方分散すべきでは?インターネット環境も電話もあるハワイやグアムでも良いのではないか? 州税が安いネバダ州とかテキサス州でも良いのではないか?

それなのに何故わざわざ1か所に集積する?
お互いにライバルだが、IT業界が1ヶ所にまとまった方が利便性・情報収集・効率など全てに勝るからではないか?
企業にとって効率や発展は、「分散より集積」

一方で、この機会に都市部集中より地方への分散を目指すチャレンジングな企業もある。10年後はどちらが優位になるのだろう。

テレワーク解禁で郊外へ引っ越した人も多くいると聞く。「早まった・・」と後悔しないといいが。



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2021年05月31日付

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